カレーを食べたかったのです。今日の晩何を食べようか考えたときに辛いものを、と思って、どうしてもカレーを食べたくなったのです。

だから帰ってきて材料を切ってタマネギとショウガを炒めはじめてからいわゆるルーが無いのに気付いても、強行するしかなかったのです。最初に引き返すなら、ここでした。牛乳はあるのだから、ホワイトシチューにでも転向すればよかったのです。

しかしすずむし君はカレーを望んでいました。ガラムマサラはあったのでなんとかなると思いました。それは本格的なものではなく、ただ香りと辛味付けのためのものでしたが、なんとかしようと思いました。買いに行く、という選択肢も浮かびましたが、即却下しました。

もう一度ルーを探してみました。ビーフシチューのルーを、見つけました。二度目のターニングポイントでした。少し迷いましたが、挑戦するほうを選びました。既にフライパンで鶏肉がいい色に焦げていたのも、理由のひとつです。それにやっぱり、辛いカレーを切望していたのです。

炒められたタマネギとショウガに、ガラムマサラも加えて炒めました。いい香りが広がります。小麦粉も一緒に炒めて、それから水を足して馴染ませていきます。カレーっぽいです。

少し色が薄かったので、ガラムマサラを足しました。少しずつしか出てこないのがもどかしくて、内蓋をはずしてゴッソリ入れました。小さな瓶の1/3くらい入れました。それから塩とコンソメを足して、ほかの材料も合わせて、煮込みます。しばらくして味見をしてみると、味が薄く、辛味だけが目立ちます。

ここで、選択を誤りました。挑戦、というより実験心でしょうか、ビーフシチューのルーを1片、投入したのです。

まろやかになる算段でした。味に深みが増す計算でした。でもそれは所詮すずむしの脳内での空論だったのです。

実際は、とても不可思議な味になりました。辛いビーフシチューでした。ブランデーの香りがガラムマサラと相成って、なにでもない匂いと味になりました。見た目はカレーにもシチューにも見えるのに、味はそのどちらでもありどちらでもないのです。

せめて食べられるものに仕上げるために、塩を足しました。ケチャップも入れました。牛乳も入れましたしウスターソースも入れました。すでに十分辛かったのですがガラムマサラも足しました。どちらかと言えばカレーに近いものにしようと思いました。

それらが功を奏してか、はたまたブランデー香に慣れたのか、なんとかカレーらしきものに仕上がりました。当初の望みどおり、とても辛いカレーを食べることができました。が、試行錯誤の結果、非常に大量に出来上がったのです。

明日はおそらく3食、謎カレーです。

でも雰囲気で出来るのね、カレー。