雨とコーヒー

先日、仕事が終わって、雨がざーざー、傘もなく、しかたないので、お茶部屋に戻って雨宿りをしていた。そこへ、すごい雨ですね、と言いながら、M2のOさんが現れて、コーヒー飲みますか?と聞く。飲むと伝えると、豆を二人分袋から出し、ガリガリと挽きはじめる。途中、ポットのお湯を沸かしなおしにコンロに行き、カップ持ってきてないんですか、と言いながら適当なカップを用意し、お湯を少し入れ温める。雨と風の音、ときどき聞こえる雷、ガリガリと豆を挽く音、漂いだす香り。
挽いた豆をフィルターにセットして、沸かしたお湯を少しずつ注いでいく。ぽたぽたと落ちるコーヒーの雫、ふわりふわりと先ほどより甘く広がる香り。この豆の膨らみかたがいいですよね、と言いながらOさんは、ふたりぶんのコーヒーをいれてくれて、その間、雨がすごいとか、空が暗いとか、でも西の方は明るいとか、ぽつりぽつりと話ながら、私はその手元と、ときどき、Oさんのふわふわした髪を眺める。
どうぞ、と言いながら、見慣れぬカップを差し出してくれ、この豆は下北沢で買ってきてるんですとか、去年までは他にふたりコーヒーを飲む人がいたんですが、とか、ぽつりぽつりと話すOさんに、このコーヒーはおいしいとか、家だとなぜかあまりおいしく入らないとか、相づちを打ちながら、コーヒーを飲み終わると、雨はやんでいて、Oさんはカップを持ってラボに戻り、私は水たまりを避けながら帰る。