全部頭の中にある、けどいつもは出てこない

suzumu2010-01-22

だらだらとiPodから流れてくる音楽を耳に入れながら井の頭線からの車窓を眺めていた。
聴こえてくる音に身を任せていたら、目の前に無い景色が見えてきた。そうだこの曲を聴いていた頃、私はここにはいなかった。えんじ色の車の車窓から、夜の工場地帯を眺め、バイパスを走っていた。道端に落ちるブロッコリーをみていた。街灯のない道へ迷い込んでいた。
その次に流れてきた曲を聴いていた頃は学生だった。今はほとんど交流の無くなってしまった友人を思った。はっぴいえんどのTシャツを干していた隣人を思った。どんなきっかけで話しをしたのだっけ。何かの授業で一緒だったのだっけ。そうだアサイさんだ。神官になるための学校に入りなおして、その先は知らない。
電車は最寄り駅に着く。改札を通って階段を下りる。
外の空気は冷たい。日がずいぶん長くなった。家に帰ると昔の景色はもう見えない。